イパネマのいい感じのお兄さん Antonio Carlos Jobim アントニオ・カルロス・ジョビン

Photo: VinnyWiki, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

今回は、『イパネマの娘』や『ウェイブ』の作曲でおなじみの アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)さん(1927/1/25 - 1994/12/8)をご紹介します。 

ボサノヴァ以前

ジョビンさんは1950年代初頭からブラジル、リオ・デ・ジャネイロのナイトクラブでピアノ演奏を行い、1952年にコンチネンタル・レコードに編曲家として雇われ、その後オデオン・レコードに移籍しました。ボサノヴァ以前は『裏方的な』仕事が多かったようです。

ボサノヴァの誕生との関わり

1959年、ジョビンさんが作曲しヴィニシウス・ヂ・モライス(Vinicius de Moraes)さんが作詞した『ノー・モア・ブルース』(No More Blues, ポルトガル語 Chega de Saudade, 邦題 想いあふれて)が、ジョアン・ジルベルト(João Gilberto)さんの歌とギターでレコーディングされたことがボサノヴァの始まりとされています。

『ボサノヴァ』にはジルベルトさんのオリジナリティーあふれる歌唱とギター奏法が深く関わっていたようです。ジョビンさんはジルベルトさんに楽曲を提供することでボサノヴァの誕生期に深く関わりました。

ボサノヴァはその後1964年ごろまでブラジルでブームとなります。

ボサノヴァとビッグバンド

1962年、サンバやボサノヴァなどのブラジルのポピュラー音楽がアメリカのジャズ界で注目されてくる中で、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)さん、スタン・ゲッツ(Stan Getz)さん、そしてエノック・ライト(Enoch Light)さんは奇しくも同じタイトルのアルバム『ビッグバンド・ボサノヴァ』(Big Band Boss Nova) を発表します。

いずれのアルバムもボサノヴァの名曲を収録していますが、演奏スタイルはサンバに近く、『BOSSA NOVA』の言葉は『新しいラテン音楽』程度の意味合いとなっています。

ボサノヴァとジャズ

1961年にブラジルツアーを行ったジャズ・ギター奏者のチャーリー・バード(Charlie Byrd)さんが、サックス奏者のスタン・ゲッツ(Stan Getz)さん等に声をかけ、米国内のミュージシャンとともに1962年『ジャズ・サンバ』(Jazz Samba)というアルバムを発表します。

1962年暮れにはブラジル政府後押しの元で米国カーネギー・ホールで大規模なボサノヴァコンサートが開かれ、そこでは、ジョビンさんもピアノ演奏を披露したそうです。

1964年、スタン・ゲッツさんはジョアン・ジルベルトさんとともに、ジョビンさんをフィーチャーして、『ゲッツ・ジルベルト』(Getz/Gilberto)というアルバムを発表します。このアルバムには、ジョビンさんは作曲家としてだけではなく、ピアノ奏者としても参加しています。また、ジョアン・ジルベルトさんの妻アストラット・ジルベルト(Astrud Gilberto)さんもボーカリストとして飛び入り参加しています。

これらを機にジャズ・ミュージシャンが音楽スタイルとしてボサノヴァを取り入れていくことが増えていきます。

ボサノヴァのポピュラー音楽化

『ゲッツ・ジルベルト』のアルバムからシングルカットされた『イパネマの娘』(Girl From Ipanema)と『コルコバード』(Corcovado, 英題 Quiet Nights Of Quiet Stars)は、アメリカを中心に世界的なヒット曲となりました。

アストラッド・ジルベルトさんは『ボサノヴァの女王』と位置づけれ、1965年以降『おいしい水』(The Astrud Gilberto Album)を始めとして数枚のアルバムが発表されます。

また、ポピュラー音楽界でも、”Bossa Nova Baby” by Elvis Presley など、(音楽的にはともかく)『BOSSA NOVA』を冠したアルバムや楽曲が一挙に発表されました。

イパネマ以後

ジョビンさんに話を戻します。

1967年以降、ジョビンさんはアメリカのCTIレーベルから、『波』(Wave), 『潮流』(Tide)、『ストーン・フラワー』(Stone Flower)のアルバムを発表します。アルバム『波』からは、ジャズ・スタンダード曲としておなじみの『ウェイブ』(Wave)が生まれました。

また、エリス・レジーナ(Elis Regina)さんとのデュエットで有名な『3月の水』(Águas De Março, 英題 Waters Of March)は1973年に発表されました。

その後、遺作となる『アントニオ・ブラシレイロ』(Antonio Brasilairo)まで精力的に創作活動を続けました。

ジャズとジョビンさん

ジョビンさんはジャズ音楽の作曲家として紹介されることもあるようですが、ジョビンさんの作曲にジャズ(ジャズ理論)が影響を及ぼしているかについては、ご本人が明確に否定していますので、ジョビンさんが作った楽曲がたまたまアメリカのジャズミュージシャンのニーズに合致しただけのようです。

改めてボサノヴァ

現代には、ポピュラー音楽、そして、ジャズの一つのカテゴリーとしてボサノヴァは残っています。オシャレなカフェのBGMとしても健在ですね。

そしてボサノヴァ創始者の一人として、『イパネマのお兄さん』ジョビンさんの名前は残り続けています。

アムレス的ジョビン・ナンバー発表!

楽曲ごとの譜面タイトルの数を元にした、アントニオ・カルロス・ジョビン・ナンバーのトップ3を発表します。

第3位 ウェイブ Wave

タイトル数合計 8タイトル。ビッグバンド譜面セットが4タイトルあり、アレンジもバラエティーに富んでいます。

第1位 イパネマの娘 Girl From Ipanema と ワン・ノート・サンバ One Note Samba

どちらの曲もタイトル数合計 9タイトルでした。以外に少ない気がします。

タイトル数調査結果

曲名とカテゴリー毎の譜面タイトル数を一覧表にしてみました。タイトル数をクリックすると商品検査結果ページに飛びます。

曲名



































































































One Note Samba 9 4 1 1 1 2
Girl From Ipanema 9 3 1 2 1 1 1
Wave 8 4 1 1 2
Quiet Nights Of Quiet Stars 6 3 1 1 1
Desafinado 5 1 2 1 1
How Insensitive 3 1 1 1
Triste 3 3
Agua De Beber 2 2
No More Blues 2 1 1 3
Dindi 2 1 1
So Danco Samba 2 1 1
A Felicidade 1 1
Águas De Março 1 1
Dreamer 1 1
Tempo Do Mar 1 1
Bonita 1 1

参考資料

ブログ記事

Wikipedia

Discogs

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