歴史を作る世界を作る - 採譜とは 編曲とは - Making the world, making the history - transcription and arranging - The word

歴史を作る世界を作る - 採譜とは 編曲とは

Making the world, making the history - transcription and arranging - The word

今回は非常に近い関係にある『採譜』という言葉と『編曲』という言葉を取り上げます。

まずは 『採譜』『編曲』 という言葉の意味を探ってみますね。

採譜とは

採譜とは、音源を楽譜化することです。 俗に言う 『耳コピ』 です。 英語では、名詞 transcription (トランスクリプション)、動詞 transcribe (トランスクライブ)と言います。 採譜をする人は、 transcriber (トランスクライバー)です。 英語の語源的には、 trans(移す) + scribe(書く) ですね。 一般的な転写と区別する必要がある場合は、 music transcription と言ったほうが良いかも知れません。

編曲とは

編曲とは、音楽を演奏形態などに合わせて楽譜化することです。 英語では、名詞 arranging (アレンジング)、動詞 arrange (アレンジ)と言います。 編曲者、編曲家は arranger (アレンジャー)ですね。 arrange は『配置する』という意味があります。

採譜と編曲の違い

採譜編曲 もどちらも傍目には楽譜を書いているだけのように見えます。

採譜 は音源を楽譜化することですので、難しく言えば、聴覚音列情報から視覚音列情報への置き換えということになります。採譜のキモは置き換えの精度です。例えば、様々な楽器によりCのキーとDのキーが同時に鳴っている場面で、個々の楽器の発音を正しく聴き取ることができるかというようなことでしょうか。技術力、忍耐力の必要な作業ですね。現代のAIでもまだまだ力不足な分野です。

編曲 は、音楽を演奏形態などに合わせて楽譜化することですので、難しく言うと、演奏形態と演奏の場に合わせた情報の創出ということになります。編曲のキモは演奏技術の把握と演奏の場を読む力です。例えば、劇のBGMを作るといったようなことです。編曲は、作曲の付加的な作業と捉えられガチですが、創造力が必要な重要な作業ですね。

出版楽譜の中での採譜と編曲 - ビッグバンド譜面の場合

ビッグバンド用譜面は、昔の音源から採譜されて出版されているものが多数存在します。音源の演奏編成が現在の一般的な編成と異なっている場合も多く、採譜と編曲を同じ人が行い、re-arrange (リアレンジ、再編曲)や recreate (リクリエイト、再製作)などと表現されていることがあります。

例えば採譜者としては、Lush Life Music社の Myles Collinsさん、Alfred社のJeff HestさんDavid Bergerさん、ベル・ミュージック・プレスの三塚知貴さんなどが挙げられます。

また、昔の音源でも採譜をせずに、original manuscript(音源演奏時のオリジナル譜面)を現代向けに編集して出版されている譜面もあります。例:Jazz Lines社Sierra社

編曲者が世界を作る

個人的な話で恐縮ですが、私は19歳の誕生日前後、高専吹奏楽部定期演奏会のポピュラーステージ向けのほとんどの楽曲を編曲しました。その作業の中で、『ステージを活かすのも殺すのもアレンジ次第』という編曲者の持つ絶大な力に気づきました。(当時は『編曲』と言っていましたが今思えばほとんどの作業が『採譜と楽器の置き換え』でした。)

そして、20代前半にメイナード・ファーガソンさんのコロンビア時代(フュージョン時代)の楽曲を多数聴くことなどで、編曲者が常に演奏者の陰にいる表現者であることが分かりました。

20代後半からのモダン・ビッグバンド音楽との出会い、そして サミー・ネスティコ(Sammy Nestico)さんボブ・ミンツァー(Bob Mintzer)さん角田健一さん等の偉大な編曲作品との出会い。

そしてつい最近の、編曲家 船山基紀さんと萩田光雄さんをフィーチャーした『ヒット曲の料理人』という2冊の書籍との出会い。

それらから導き出された私なりの答えは……、

『編曲者によって音楽の世界感が作られている』 ということです。

大げさですが 『編曲者が世界を作っている』 と言ってしまっても良いかも知れません。

採譜者が歴史を作る

編曲者が世界を作るのであれば、採譜者は何なんでしょう?

考えてみました……。

記録係、書記です。

後世のために聴覚情報を視覚情報として記録に残すという意味では、採譜者は重責を担っていると言えます。

『採譜者は音楽の歴史の記録者、歴史を作っている』 と言ってしまって良いでしょう。

 

 

話が壮大になってしまいました(汗)

みなさまが演奏する音楽について、採譜者や編曲者にも目を向けていただければ幸いです。


文責:アムレス 店長 山崎 代三 (この記事は過去発行のメールニュースの記事に修正を加えたものです。)

 

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