キャラバン Caravan - dive into a song

キャラバン Caravan - dive into a song

ポピュラー音楽のミクストカルチャー化を象徴する曲としてご紹介いたします。

ありがたいことに Wikipedia(ウィキペディア)日本語版に曲の解説がありましたので、まずはそこから見ていきましょう。

 

Wikipedia日本語版の記述について

2021年6月29日の Wikipedia日本語版より
https://ja.wikipedia.org/wiki/キャラバン_(曲)

冒頭部引用

1935年、デューク・エリントン(Duke Ellington)と、エリントン楽団のトロンボーン奏者ファン・ティゾールが作曲した。1937年にはアーヴィング・ミルズによって歌詞がつけられた。非西洋の音階を取り入れたメロディと、4ビートに準拠しない激しいリズムが特徴で、アフロ・キューバン・ジャズの代表曲とされる。

できれば後半部分を 『非西洋音階の主旋律が特徴で、アフロ・キューバン・ジャズの先駆けとなった曲である。』 としたいところです。ジャズ・セッションなどで「アフロ・キューバンの曲と言えばキャラバン」といったところまで来ているのかも知れませんが、成り立ちを調べると代表曲とは言えない気がしています。(wikipediaを書き換えてしまおうか……迷う。)

 

アナリーゼ

特徴的なことを簡単に分析してみました。

構成

AABA
Aメロは非西洋的
Bメロは西洋的

Aメロが非西洋的である理由

音階的に、中近東地域(イスラム教の影響を強く受けたトルコから東側の地域)で用いられる音階に近く、また音節的にロングトーンが主体となっている(冒頭から2小節間、5小節目から6小節目、9小節目から10小節目、13小節目以降)。
どんなスケールで演奏したら良いか悩んでいるアドリブ奏者が多い感じです。

Bメロの特徴

歌ものの場合はメロディがありますけど、インストゥルメンタルものはメロディがかなり適当なので『ブリッジ』と呼ぶのが相応しい気がします。

 

演奏スタイルの変遷

フォックストロット Foxtrot (1937- )

1936年のオリジナル録音から1950年代半ばまでは、『ズンチャッ ズンチャッ ズンチャッ ズンチャッ』というFoxtrotのリズムで演奏されていました。

最初の録音はエリントン楽団のメンバーによる小編成バンドだったそうです。
1st RECORDING OF: Caravan - Barney Bigard (1936) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=fshOi9QaE18&ab_channel=the78prof

エリントン楽団も録音しています ビッグバンド版
1937 HITS ARCHIVE: Caravan - Duke Ellington - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=jMfOGxGPSiQ&ab_channel=the78prof

歌ものはこれが一番古いのかな? ボーカルビッグバンド版
Valaida Snow - Caravan (Ellington), 1939 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Uj2N18ZfZAY&t=25s&ab_channel=240252

時代を下ってエレキギターをフィーチャーしたビッグバンド版。後のベンチャーズへの影響もありそうです。
1953 HITS ARCHIVE: Caravan - Ralph Marterie - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=azJxT2e_2OE&ab_channel=the78prof

ラテンジャズ Latin Jazz (1954- )

ディジー・ガレスピーさん(Dizzy Gillespie)とマチートさん(Machito)の 1954年のレコーディング"Afro"でラテンジャズ系のミュージシャンに取り上げられることが多くなったようです。ガレスピーさんが1951年ごろ Savoyレーベルに残した録音はフォックストロットでしたので、ガレスピーさんとマチートさんの出会いがラテンジャズバージョンのCaravanを生み出したと言っても過言では無いでしょう。

ガレスピーさん 1954年マチート楽団のメンバーを迎えて
Dizzy Gillespie - “Caravan” - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=olot4dOPIts&ab_channel=TalkAboutJazz.Com

エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)さんのアルバム "Ella Fitzgerald sings the Duke Ellington songbook"では Tumbao のリズムでアレンジされています。(スマホの再生ではベースが聴こえなくてかなり混乱しました。)
Caravan - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=xMz01jD1634&ab_channel=EllaFitzgerald-Topic

現代 Present styles

ラテン(アフロ・キューバン)に限らず、いろいろなスタイルで演奏されています。

ギターバンドの雄ベンチャーズ(The Ventures)さん 1960年初録音
ベンチャーズ - キャラバン The Ventures - CARAVAN - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=d_kFL6jNjEU&ab_channel=practicetheguitar01

東京佼成ウインドオーケストラさん 1978年発売 New Sounds in Brass 第6集に収録
【吹奏楽】キャラバン - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=-JCSQz4SvCA&ab_channel=noboos1

東京スカパラダイスオーケストラさん 1989年リリース
Tokyo Ska Paradise Orchestra - “Skaravan” on Room Service - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=DPOeGWl6x4E&ab_channel=RoomServiceShowVEVO

ブラスロックバンド シカゴ(Chicago)さん 1995年発売 Night and Dayに収録
Chicago - Caravan - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=KPgRDoVfDG0&ab_channel=DonQuixote

小曽根真さん 2003年発売 Rebornに収録(ピアノトリオ)
Caravan - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=jzz0YOiMaog&ab_channel=MakotoOzone-Topic

上原ヒロミ(Hiromi)さん 2008年発売 Beyond Standardに収録
Caravan - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=MR3l2LU513c&ab_channel=VariousArtists-Topic

アルトゥーロ・オファリルとアフロラテンジャズオーケストラ(Arturo O’Farrill and The Afro-Latin Jazz Orchestra)さん 2008年リリース
Caravan - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=99ltDgtpJt4&ab_channel=ArturoO’Farrill-Topic

 

まとめ - Caravanの演奏スタイル

まとめてみますと、

プエルトリコ出身のファン・ティゾール(Juan Tizol)さんが書いた中近東風旋律を米国人のデューク・エリントン(Duke Ellington)さんがまとめ、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)さんとマチート(Machito)さんが演奏スタイルをラテンに拡張した。
ジャズ・セッションではAメロをアフロ・キューバンで演奏するのが定番だが、演奏スタイルは現在でも拡張され続けている。

といった感じでしょうか。

 

参考資料

記事執筆にあたり主に下記資料を参考にしました。


“Caravan” was written by Duke Ellington’s trombonist, Juan Tizol, and was already part of the Ellington canon when Latin musicians started peeling back the veneer of swing to expose Tizol’s Caribbean roots. In 1954, Dizzy Gillespie recorded a session with the Latin bandleader Machito and his A-list rhythm section: Candido Camero (congas), Jose Mangual (bongo), Ubaldo Nieto (timbales) and Bobby Rodriguez (bass). The musicians play bebop with a Cuban accent and offer a strong contribution to the transformation of “Caravan” into a Latin jazz standard. Here, Gillespie sounds right at home with the Cubans, as he did with his fellow beboppers.
(DeepL翻訳)
"キャラバン」はデューク・エリントンのトロンボーン奏者、ファン・ティゾールが作曲した曲で、ラテン系ミュージシャンがスウィングの皮を剥いでティゾールのカリブのルーツを明らかにし始めたときには、すでにエリントンの名曲の一部となっていた。1954年、ディジー・ガレスピーは、ラテン系バンドリーダーのマチートと彼のAリストのリズムセクションとのセッションを録音した。カンディド・カメロ(コンガ)、ホセ・マングアル(ボンゴ)、ウバルド・ニエト(ティンバレス)、ボビー・ロドリゲス(ベース)。彼らはキューバ訛りのビバップを演奏し、「キャラバン」をラテン・ジャズのスタンダードにすることに大きく貢献している。ガレスピーはビバップの仲間たちと同じように、キューバ人たちと一緒に演奏しているのである。
– 引用ここまで

Dive into a song

コメントを残す