よくわかる楽譜印刷出版業界 FJH社 - Publisher who's who

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今回は、楽譜印刷出版業界の大物が創業した出版社 FJH社をご紹介します。

FJH社沿革 - ビッグバンド譜面を中心に

FJH社は、アメリカ合衆国の教育向け楽譜出版社の中では、中堅どころでしょうか。ビッグバンド譜面を中心に沿革をまとめてみました。

1988年、フランク・Ｊ・ハッキンソン（Frank J. Hackinson）さんと妻のゲイル（Gail）さんにより FJH Music Company Inc.（FJH社）が設立され、音楽教育向けに、ピアノ、ギター、吹奏楽、弦楽合奏の楽譜を出版開始
2001年ごろからビッグバンド譜面の出版を開始
2007年までコンスタントにビッグバンド譜面の新譜を出版
2008年から2013年まで、ビッグバンド譜面の新譜出版を停止
2014年、ビッグバンド譜面の新譜を出版
2015年から2018年まで、ビッグバンド譜面の新譜出版を停止
2019年、HX Music LLC（エイチエクス・ミュージック社、HX Music社）のビッグバンド譜面を販売開始。HX Music社は毎年ビッグバンド譜面の新譜を出版。

同社のビッグバンド譜面は質の良いものばかりなのですが、2008年以降は、ビッグバンド譜面の新譜出版がほぼ停止されています。競合ひしめく中で戦略変更を余儀なくされている感じでしょうか。

そんな中で、HX Music社の販売権獲得はグッド・ニュースです。本家のFJH社からも何かしらの動きが欲しいものです。

言わずもがなですが、会社名が創業者の頭文字！

そんな創業者フランク・Ｊ・ハッキンソン（Frank J. Hackinson）さんの経歴をざっと追ってみましょう。

さらっとまとめてしまいましたが、ハンセン・ミュージック社も CPP社も現在は存在しませんが、音楽印刷業界の中では主要な大企業でした。

ハッキンソンさんは、ハンセン・ミュージック社、そして CPP社でとても重要な仕事をされていました。 CPP社の離任原因は、企業買収による解雇かもしれません。

ハッキンソンさんが社長を担っていた CPP社とはどんな会社でしょうか。ある出版社との関わりも見えてきます。

1971年、Frank J. Hackinsonさんらにより設立。ポピュラー音楽の印刷出版を多く取り扱う。
1983年以降、Big 3 (Robbins, Feist and Miller)の印刷権取得, Studio P/R 社, Belwin-Mills社など買収
1988年、親会社であるコロンビア・ピクチャーズ・エンタテイメント(Columbia Pictures Entertaiment, CPE社）社の傘下から、投資会社ボストン・ベンチャーズ社(Boston Ventures)の傘下となり、CPP/Belwinに社名変更。
1994年 CPP/Belwin社は Warner Bros.社傘下の Warner Chappell Music社に買収される、その後 Warner Bros. Publicationsに社名変更。
2005年 Warner Bros. Publications社は、アルフレッド（Alfred Publishing）社に買収される。

CPP社は、映画製作会社の子会社で、音楽印刷出版を扱っていました。 CPP社の親会社であった CPE社は、CPP社を手放した後に日本のソニー社に買収されました。当時の日本ではバブル期で日本企業による外国企業の買収が大きなニュースになっていました。

アムレスでは2001年から旧ワーナー社（Warner Bros. Publications, 現 Alfred Publishing）を仲介としてFJH社の楽譜の取り扱いを開始。
2005年秋からは、旧ワーナー社での仲介がなくなったことにより、FJH社と直接取り引きを開始。

2005年の春頃、FJH社の譜面やデモCDが突然入荷してこなくなったので、かなり驚いた思い出があります。旧ワーナー社には半年近く待たされた後、直接取り引きを提案されました。

2008年以降 FJH社からデモCDが供給されなくなってからは、譜面の売上は今一つです。

実はかなり早い時期から、FJH社のウェブサイトで参考音源が聴けたのですが、日本ではそのスタイルは受け入れられていませんでした。

インターネットの回線速度の問題もありますけど、いろいろな曲を自動再生してくれないと面倒ですものね……。

ちなみに、2022年現在 HX Music社は独立した出版社ですが、今のところ同社の出版物は FJH社を介して流通するため FJH社の出版物として扱っています。今後 HX Music社のタイトル数が増えてきたら出版社名を分離させます。